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本を書く医師 Topキーウィにご用心




キーウィにご用心


 キーウィフルーツの皮をむくと、手がぬるぬるする感じがしませんか。これはキーウィに含まれる蛋白質分解酵素によって、指の皮膚がわずかに溶けるからです。この酵素は、キーウィの他にも、パイナップルやパパイヤ、メロン、イチジク、そしてショウガや米にも含まれています。
          
 この性質を利用して、肌がつるつるになるという石鹸や入浴剤が発売されています。また、料理の際に、肉をパイナップルやショウガと一緒に漬け込むと、風味が増すだけでなく、肉が柔らかくなります。

 このことから、これらの果物を、肉料理を食べたあとで摂取すると消化を助けるとか、普段から食べると胃腸を丈夫にするなどと書いてあるサイトがありますが、残念、これは過大評価です。

 胃には胃酸があり、とくに空腹時の胃酸は塩酸並みの強酸性です。そんな環境では酵素は一瞬で変性し、力を発揮することはできません。

 さて、キーウィに含まれる蛋白質分解酵素アクチニジン () には、ちょっと困った性質があります。実は果物アレルギーの原因として圧倒的に多いのがキーウィで、その原因物質が、このアクチニジンなのです。

 以前は、果肉が緑色の品種に比べて、果肉が黄色の 「ゼスプリゴールド」 は、比較的アレルギーを起こしにくいと言われていました。しかし、最近の研究により、アレルギーを起こすには十分な量のアクチニジンを含んでいることがわかりました。「ゼスプリ」 にはこれ以外のアレルギー性物質も入っていますから油断しないでください。

 アレルギーは人間以外の動物にも起こります。猫に与えると、酔っぱらったようになるマタタビという木がありますね。このマタタビはキーウィと同じ仲間なので、猫がアレルギーを起こすことがあります。実際にマタタビで遊んでいた猫が、気道 (のど) がふさがって、呼吸困難になって死んでしまった例が報告されています。
    
 アクチニジンは、キーウィの他にパイナップルにも含まれているので、キーウィアレルギーのある人はパイナップルにもご用心。加熱した果物や缶詰でも起きることがあります。

 そして困った性質がもう一つあります。キーウィやパイナップルを食べたときに、舌や口の中がピリピリしたことはありませんか。これはアレルギーではありません。シュウ酸カルシウムという物質が原因です。

 この物質が特に多いのが十分に熟していない果物で、顕微鏡で見ると針のように尖った結晶構造をしています。これが口の中や喉にチクチク刺さって痛んだり、胃腸を刺激して嘔吐や下痢を起こしたりするのです。また山芋や里芋で手や口がかぶれることがありますが、これも同じ物質が原因です。

) 生化学や分子生物学領域の論文では 「アクチニダイン」 と呼びますが、一般的には 「アクチニジン」 の名称が多く使われていますのでアクチニジンとしました。