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心臓病で歯が痛くなることがあるのですか どこかが痛くて病院に行くと、たいてい痛み止めがもらえます。「痛み止めで治るわけじゃないから」と、鎮痛薬を飲まずに我慢する人がいますが、きちんと飲むほうが早く治ります。なぜでしょう。 痛みがあると、脊髄反射という反応が起きて、痛む部分の筋肉が収縮し、血流が悪くなります。そうすると回復するのに必要な酸素や栄養を十分補給できなくなるからです。 さて、この痛み、痛む場所の真下に病気や損傷があるとは限りません。かなり離れた場所が痛むことがあり、これを関連痛と呼んでいます。 かき氷など冷たいものを食べると、こめかみが痛くなることがあるでしょう。これも関連痛です。冷えて痛みが出たのは喉なのに、頭が痛くなったように感じているのです。 かき氷ではなく本物の病気だと、病気が進行するにつれて痛む場所が正しい位置に近づきます。しかし早期に発見するには、関連痛にまどわされずに正確に病気を見つけ出す必要があります。 例えば、歯や喉が猛烈に痛くなり、あちこち調べたら心筋梗塞の発作だったということがありますし、逆に、胆石なのに心臓のあたりだけ痛くなる例もあります。また胃潰瘍で背中が痛くなるのは一般的に見られる症状です。 ただし、関連痛は実に多様な現れ方をするので、これはほんの一例です。個人差もありますから、ここでは痛む部分に病気があるとは限らないということだけ覚えておいてください。 関連痛を理解する鍵となるのは、体のどこで起きた痛みでも、それを 「痛み」 として認識するのは脳だということです。感覚を伝えたり手足を動かしたりする神経は、背骨の中にある脊髄を通って脳につながっています。 ちょうど電気の配線のように無数の神経の束が合流したり分離したりしながら走行していますが、一本一本の電気のコード(神経) は独立していて、隣り合う神経が自然に溶けあうようなことはありません。それなのに、病気の場所と離れた神経が痛みを伝えるのは不思議です。 仮説はいくつかあるものの、実は関連痛が起きるしくみは十分解明できていません。将来の研究課題という意味では東洋医学との関係もあげられます。 東洋医学では、手のひらや背中など、離れた場所に刺激を与えて内臓に働きかける考え方があります。ツボやお灸がそうですね。これも医学的な仕組みはほとんどわかっていませんが、もしかしたら、関連痛が起きる道筋を利用して、治療を行っているのかもしれません。(画像は人体百科『鍼灸経絡経穴図』より) |
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