「本を書く医師」が医学情報をわかりやすく伝えます
|
||
|
ほとんどの水虫は簡単に治ります 水虫というと、「どうせ再発するし、面倒だから治療しない」 という人がよくいます。しかし、「水虫は治らない」 というのは昔の話です。 水虫の原因は、真菌 (カビ )の一種である白癬菌の感染です。大正7年 (1918)、日本の太田正雄博士が、世界で初めて白癬菌の分離培養に成功しました。 当時の日本では草履や下駄を履くのが一般的だったため、患者さんはごくわずかでした。しかし、生活が欧米化して靴を履くようになると急激に増え始め、現在では、日本人の約5人に1人が感染していると推定されています。 白癬菌が住みつくのは皮膚の表面にある角質層です。角質層の主成分はケラチンという蛋白質で、白癬菌は酵素を使ってケラチンを溶かし栄養源にしています。爪にも感染するのは、爪もケラチンを豊富に含んでいるからです。 足の裏に発症しやすいのも同じ理由です。足の裏の角質層は体の中で一番厚いからですね。また、靴や靴下を履くことで皮膚が蒸れるので、カビの仲間である白癬菌にとっては最適な生息環境といえます。 水虫が自然に治ることはありません。現在は、白癬菌に対して優れた作用を持つ薬剤が開発されていますので、毎日入浴後に、痒みや赤みのない部分も含めて足の指の間や、足の裏全体に塗るのが治療の基本です。 治療を始めると1、2週間で痒みなどの症状は治まりますが、白癬菌は角質層の深いところで生き残っていますから、ここで治療をやめてはいけません。症状の有無に惑わされず最低1か月は続けます。 ここが最大のポイントで、言い換えれば、これだけ守ればいいのです。痒いときだけ塗って、よくなったらやめてしまう、こんな使い方では再発を繰り返しながら確実に進行していくだけです。 爪にまで感染して爪白癬になると、皮膚の表面に薬を塗るだけでは治りません。抗真菌薬という薬を内服します。 抗真菌薬で治る確率は約70%ですが、「えっ、100%じゃないの?」 とがっかりしないでください。残り30%のほとんどは、患者さんが治療の途中で内服をやめてしまった場合です。手遅れにならないうちに適切に治療すれば100%治ると考えて構いません。 ときどき、市販の水虫薬をきちんと塗っているのに治らない、という人がいますが、こういう場合によくあるのが、実は水虫ではなかった、というケースです。水虫によく似た皮膚の病気はいくつもあり、皮膚科の先生でも顕微鏡で検査しなければ確定診断ができません。 水虫だと信じ込んでいる人の患部を専門家が調べたところ、本当に白癬菌だったのは全体の半分から3分の2くらいだったというデータもあります。 その一方で、痒みがほとんど出ないのに調べたら水虫だったという例もあり、やはり皮膚科で診断してもらうのが確実です。 なお、酢、にんにく、硫黄の温泉に浸す、擦り込むといった民間療法や消毒薬で治ったと主張する人がいますが、本当に治ったのだとしたら、おそらくは始めから水虫ではなかったのでしょう。 以下は特に女性や若い人へのメッセージです。水虫になるのは不衛生だから、という一般的なイメージがあるため、病院で先生に見せるのも恥ずかしいと思うかもしれません。 しかし実際は、たまたま爪に傷がついているときに旅行に行き、足ふきマットを介して白癬菌が爪に侵入するケースも珍しくないのです。皮膚科の先生は、そういう事例をよくご存知です。あれこれ悩むより、一日も早く診察してもらって治療を開始すれば、誰にも知られないうちにきれいに治せます。 |
|
Copyright (C) 2011 「本を書く医師」事務所 All Rights Reserved. |