「本を書く医師」が医学情報をわかりやすく伝えます
|
||
|
耳鳴り、何とかなりませんか 熱があるときや、高い山に登った時など、一度は耳鳴りを経験したことがあるでしょう。耳の中でセミが鳴いてるようだと表現する人もいます。鼻と耳はつながっているので、鼻炎で起きることもあれば、肩こりや不整脈も原因になります。 もちろん、耳の奥で音を聞き取る蝸牛(かぎゅう、カタツムリという意味です)という器官の炎症や、水が溜まったことによる耳そのものの病気でも起こり、頻度は少ないながら、腫瘍や血管の病気が隠れていることもあります。耳鳴りに気づいたら早めに耳鼻科で診察を受けてください。 耳鳴りに悩む人の半数以上で聴力が低下していますが、聴力が正常な人もいます。ここでは、はっきりした病気がないのに、慢性的に続く耳鳴りを取り上げます。 こういう人を調べてみると、症状が始まったころに大きなストレスを感じていたというケースが多く、また、ストレスが続いていると、重症化しやすいこともわかっています。 不思議なことに、耳から脳へ音を伝える神経(聴神経)を完全に切断しても耳鳴りは止まりません。このことから、耳鳴りは耳ではなく脳の中で発生していると考えられています。 原因不明なので特効薬はなく、たいていは、ビタミンB12製剤や栄養剤を内服して神経の修復を促して、耳鳴りに伴うイライラや不眠・緊張に対しては安定剤を使います。 こう聞くと、「なんだ、ビタミン剤か」 と言う人がいますが、ビタミンB12の神経修復作用は医学的に確かめられており、しびれや痛み、麻痺などの神経障害には必ずといってよいほど使われます。現時点で最も有効な治療法です。 しかし、1~2か月たっても効果が無い場合は、残念ながら治癒は期待できません。そんな中で、最近になって、脳に直接働きかけるTRT(耳鳴り再訓練療法)という新しい治療法が開発されました。 私たちの身の回りには、さまざまな音が氾濫していますね。このうち、脳が音として意識するのは約 30%です。 例えば、冷蔵庫のモーターの音や、時計の秒針がカチカチいう音など、実際に聞こえてはいても普段はほとんど意識していないはずです。これは耳に入ってくる音の中から、脳が必要な音だけを選び取り、重要でないと判断したら意識に上げずに捨てているからです。 耳鳴りの音も本来は重要でないはずですが、脳が重要だと勘違いした結果、いつまでも続いてしまうのではないか……。この理論に沿って開発されたTRTは、「耳鳴りを意識しないように訓練する」治療法です。 (TRT:ほんまファミリークリニック HP より) 患者さんは、この理論をしっかり理解した上で、医師によるカウンセリングを受けながら、写真の耳鳴り治療器が発生する 「心地よい雑音 (治療音)」 を毎日3~6時間聴きます。補聴器に似た装置です。 3~6か月で耳鳴りが気にならなくなり、報告によると70%の患者さんで症状がかなり改善されたそうです。しっかり治すには、約1~2年使用する必要があります。 まだ研究段階で、日本では実施している医療機関が限られますが、関心がある人は地元の耳鼻科でお尋ねください。 |
|
Copyright (C) 2011 「本を書く医師」事務所 All Rights Reserved. |