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眠らずにいられる人っているの? 不眠に悩む人は多く、成人の半数以上が、寝つきが悪い、夜中や明け方に目が覚める、と感じているそうです。 不眠症には心身の病気が隠れている場合もありますが、中には7時間眠るのが正常と信じ込み、自分は不眠症だと心配する人もいます。しかし、健康な人でも、約 10%は 9時間以上眠り、約 20%は 6時間以下しか眠らないという統計があります。翌日の活動に支障が出ない限り、それがその人にとって適切な睡眠時間ということです。 さて、何日も、さらには何十年も! 眠らないという人がテレビ番組に登場することがありますが、そんなことがあるのでしょうか。 目が開いていても、脳の活動が低下していたら起きているとは言えないので、本当に寝ていないことを科学的に証明するには脳波を測定する必要があります。こうして実際に確認された例としては、平均1時間しか眠らない健康なフランス人女性の記録があります。 なぜ眠るのか、はっきりとは解明されていませんが、おそらく最大の理由が脳を休めることです。仕事や家庭の事情で遅くまで起きていなければならない日が何日か続くと、頭が重くなったり、何をしても楽しくなくなったりするものです。 そんな時、2、3秒間、ふっと意識が飛ぶような感覚を覚えたことはありませんか。この状態を専門用語でマイクロスリープと言います。脳を守るために人間に備わった仕組みで、短いながらもかなり効率良く脳を休ませることができます。 実際、ニュースに登場するような極端に睡眠時間の短い人について調べたところ、本人も気づかないくらい短いマイクロスリープが何度も発生しているのを確認したという報告もあります。 また、脳には、脳全体を眠らせるのではなく、その時の状況に応じて優先順位をつけて、必要性の低い機能だけ休ませる仕組みがあるという説があります。 ヒントになりそうなのが、まったく寝ていないように見える動物の研究です。例えば、渡り鳥は昼も夜も飛び続けますし、イルカはずっと泳ぎ続けます。イルカは哺乳類なので、魚と違って海の底で眠ることができず、海面にいる必要があるからです。 そのため、どのように寝ているのか、ずっと謎でしたが、イルカの脳波を調べたロシアの研究者が驚くべき発見をしました。なんと左右の大脳半球を交互に眠らせていたのです。 起きている方の大脳半球はしっかり活動しており、ヒレは片側だけ動かし続けています。その結果、寝ながら大きな弧を描いて回遊しているそうです。人間の脳との関連も含め、睡眠研究の発展が待たれるところです。 |
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